性依存と女性嫌悪の日々

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0時26分

彼は孤独だった。


20代前半の彼は、幼い時に父が女を作って蒸発し、その後暫くして母も男を作って出て行った。


母から2〜3ヶ月に一度の少額の仕送りとアルバイトでなんとか生きて来た。


住所も電話番号も教えてくれずに、一方的に振込みを

知らせるメールだけが届いた。


彼からメールを送る事は出来なかった。受信拒否されていたのだろう。


その仕送りも、やがて無くなった。


彼は、寂しさからかバイト先で知り合う女性には直ぐに求婚していた。


それで、バイトがクビになった事もある。


彼は体調が悪く、夜は眠れないので、薬で無理やり寝ていた。


そして、彼は再び、新しいバイトをはじめた。


その人は正社員で、彼には親切に仕事を教えていた。


家にも招待し、嫁の手料理をご馳走したりしていた。


それが彼には苦痛だった。家に帰ると、独りの寂しさが強くなるから。


その人は、『心療内科などは通っているのか?』、『薬は飲んでいるのか?』と彼に聞いた。


彼は、『はい』と短く答えた。


その人は、『薬は体に良くないから少しずつでも減らした方が良いんじゃないか?』と言った。


彼は短く『考えてみます』と答えた。


ある日、彼は出勤しなかった。


その人が電話をかけたけれど、止められていた。家に行っても、誰も出なかった。


彼は無断欠勤が続いたのでクビになった。


ある日、彼からその人に電話があった。


『お金が払えなくて電話を止められた』と。そして、『家賃も払えないから家も出なくてはならない』と。


その人は、『基本料金を払うから電話を繋がるようにしておいて』と言ったが、彼は『悪いから』と断った。


彼は『また連絡します』と言って電話は切れた。


その後、その人に1〜2ヶ月に一度くらいの電話があったけれど、『なんとかやってます』というだけで、住所や詳しい事は語らずに直ぐに電話は切れた。


最後の電話から半年ほどたった頃、その人に電話があった。


電話の相手は、彼の義妹だと言った。


彼が、飛び降り自殺をしたと。


鞄はなく、


ポケットの中には、その人の電話番号を書いたメモだけが入っていた。

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